知識システム及び適応された技術

 五つの湖から構成される三方五湖は、湖ごとに塩分濃度や水深などが異なり、そこに生息する魚介類も異なることから、湖ごとに漁獲される魚介類は異なります。また、水深の違いは湖ごとに特徴のある漁法を成立させています。例えば三方湖で現在も行われているたたき網漁は、浅い水深を活かしてフナやコイを漁獲する伝統的な漁法であり、世界的にも独特な漁法です。その他、樹木の枝葉を束ねて沈め、テナガエビや小魚を漁獲する柴漬け漁は、湖周囲に広がる里山の樹木から季節や対象魚により樹木の種類を替えて用いており、周辺里地と湖のつながりを示すものです。

 一方で、湖ごとに異なる漁業協同組合が組織されており、漁期や漁具・漁法の制限などにより水産資源を守ってきています。

たたき網漁

三方湖

 たたき網漁は、水面を竹竿でたたき、水温が低いために湖底で活性の低くなったフナやコイを驚かせて刺し網に追い込む漁法であり、世界的にみても三方湖ならではの独特な漁法です。三方湖は、水深が概ね2.5mと浅い一方で、湖に流入するはす川から流れ着いた木竹が大量に湖底に存在します。そのため、湖に生息する魚類にとって生息地としての機能を果たす一方で、漁業者にとっては、地引網のように湖底に網を引きずることにより漁獲することができません。そこで、浅い水深であることと冬季に魚類の活性が低くなることを活かして考案された、三方湖の地形を活かした手法となっています。

たたき網漁の模式図
たたき網漁の模式図(漁業者の証言をもとに作図)
たたき網漁
たたき網漁
たたき網漁で捕獲されたコイ
たたき網漁で捕獲されたコイ

柴漬け漁

三方湖

柴漬け漁
柴漬け漁

 三方湖では、コイ・フナのほかに、筒によるウナギ漁がさかんであるほか、三方湖の周辺の里山から採取した樹木の枝葉を活用した柴漬け漁や、多くの柴漬けを設置したぬくみ漁など、独特な漁法が現在でも行われています。

ウナギ筒漁

水月湖・菅湖

 水月湖・菅湖は、三方五湖の中央部に位置し、塩分濃度が薄い汽水湖であり水深は深い。水月湖・菅湖では、スズキを対象としたはえ縄漁や、ウナギの筒漁がおこなわれています。

ウナギ筒漁模式図
ウナギ筒漁模式図
「湖の漁具展」(三方町立郷土資料館、昭和62年)を参考に作図

シジミ漁

久々子湖

 久々子湖は、三方五湖の最下流に位置しており、その下流側は日本海に通じる汽水湖で、塩分濃度は高い。久々子湖の湖岸の湖底は砂質であり、シジミ(ヤマトシジミ)の漁獲が伝統的に伝わってきています。久々子湖におけるシジミは、高塩分環境に棲息していることから体内のアミノ酸含量が高く、高い食味であることが知られています。久々子湖の漁業者は、シジミを専用のジョレンをつかって人手により採取しており、獲りすぎないことに配慮されています。

シジミ漁(久々子湖)
シジミ漁