世界及び日本においての重要性

 日本のほぼ中央部の日本海側に位置する三方五湖は、五つの湖の合計面積が10.93km²、周囲は34.25kmあります。三方五湖は、北側を日本海に接することから汽水を湛える湖であり、かつ、その塩分濃度は湖ごとに異なることから、湖それぞれで生息する魚類は異なり、五つの湖それぞれにおいて、独自の漁法による漁業が発達しています。また、三方五湖周囲の急峻な山地は梅栽培として活用され、平地においては水田稲作が行われています。梅栽培は急峻な山地での農業的土地利用をしながらも湖への土砂流入を防ぎ、水田の水路は湖の魚類再生産の場としてその機能を有しています。さらに、湖からの恵みを享受してきた歴史文化は、宇波西神社の王の舞に代表されるように、地域住民に深いアイデンティティを現在に伝えています。

 三方五湖と周辺里地里山では、漁業、水田稲作、梅栽培とも、いずれも小規模な経営規模です。しかしながら、三方五湖は地域住民による郷土への誇りと相まって、大規模な土地改変に至ることなく、伝統的な漁法による持続的な資源利用が古くより営まれてきました。また、当地では、自然再生、グリーン・ツーリズム、伝統文化の継承といった活動に際しては、漁業者、農業者をはじめとする多様な主体の自発的連携による取組が活発であり、新たな社会生態ランドスケープを形成しています。そして、そのなかで、現在も里海湖と里地里山との連環の持続的利用が図られています。